抑制政策と予防政策について

抑制政策と予防政策について

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 新型コロナウイルス感染症の感染拡大が広がっており、ついに、一日当たり緊急事態宣言を出した第一波の最大の感染者数を増える感染者が発生ている。

 すでに、令和2年5月17日に以下の内容の提案を訴え、雑誌などへも、飲食店の衛生管理の問題を投稿するなどして問題提起していたが、話が現状はPCR検査を拡大すれば解決するというような方向にすり替えられているようにも感じる。

 しかし、PCR検査の感度は70%と言われており30%は偽陰性が発生するほか、1%の特異点があり1%の偽陽性がでるのであれば、PCR検査を中心としたクラスター対策では3割は漏れが出て、さらに1%の実際には感染していない人を感染者としてしまうという結果になるのだろう。

 すなわち、PCR検査に頼ったクラスター対策は限界があるという事となる。

 だからこそ、個々の飲食店が衛生対策を「まじめ」にしなければ、新型コロナ感染症拡大は絶対に防げいない、と、言い続けているわけです。

5月17日付政策提案の一部

5 抑制政策と予防政策について

 
5.1 交通事故という問題における抑制政策

抑制政策について考える場合に、交通事故による死傷者を減らす政策を例にして検討してみる。交通事故の場合、2019年中の交通事故発生状況は死者数3,215人であるが、交通事故死者を政策的にゼロにする方法は抑制政策をすれば簡単だろう。国民が外出を自粛して、自転車にのる頻度がゼロになれば交通事故死者はゼロになる。しかし、その場合には、自動車を移動手段・輸送手段に利用できることのメリットは受けることが出来ず、経済は犠牲になる。

 さらに、抑制政策の欠点として、解除した時のリバウンド(第二波)があげられる。交通事故死者がゼロになり、自粛を解くと、当然、また交通事故は元通りの状況に発生するようになる。すなわち、抑制政策は、政策を実施している間は効果があるのに対して、抑制を解くと元通りになるという特徴がある。

 そのため、新型コロナウイルス感染症拡大に関しても、人と人との接触を8割削減する、外出を自粛する、店舗の営業を自粛するなどしても根本的な解決にはならず、店舗を開けば再び感染拡大が発生することは容易に予想できる。

5.2 交通事故という問題における予防とは

 それに対して「予防」の政策は、交通事故でいえば「免許制度」をつくり交通ルールなどの知識、運転技能が一定水準の人だけに免許をあてて運転することができるようにするという仕組みをつくり、交通ルールを違反した人を取り締まり一定程度の違反をした人は車を運転できなくする点数制度などにより交通事故を減らす努力をしている。予防政策に関しては、抑制政策と異なり交通の利便という得られる効果と共に、事故を減らすことが可能である。

 同様に、新型コロナウイルス感染拡大に関しても、予防の取り組みが可能であり、それにより経済活動との両立が可能です。飲食店は、これまでもO157、ノロウイルス、寄生虫など様々な病原体の感染拡大の場となってきた。美味しい食事、仲間との会話の弾む楽しい場所であるはずの飲食店において、食中毒を起こしてしまった場合、店は顧客の信用を失うだけでなく、営業停止等の行政処分を受けることにもなりかねない。しかし、新型コロナウイルスに関しては、現時点では発生したことによる店舗に対する信用失墜はあるものの行政処分は存在しない。そこで、どうしても流行がおさまるのをただ待てばよいという意識になりがちである。

5.3 飲食店における予防政策

 飲食店の「生ものを扱う」「人と人の接触が多い」等の条件が、様々な感染症が広がりやすい場となっている。そこで「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」がつくられて感染拡大の予防がされている。 「公衆衛生の見地から国民の日常生活に極めて深い関係のある生活衛生関係の営業について、衛生施設の改善向上、経営の健全化、振興等を通じてその衛生水準の維持向上を図り、あわせて利用者又は消費者の利益の擁護に資するため、営業者の組織の自主的活動を促進するとともに、当該営業における過度の競争がある等の場合における料金等の規制、当該営業の振興の計画的推進、当該営業に関する経営の健全化の指導、苦情処理等の業務を適正に処理する体制の整備、営業方法又は取引条件に係る表示の適正化等に関する制度の整備等の方策を講じ、もつて公衆衛生の向上及び増進に資し、並びに国民生活の安定に寄与することを目的」(生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律第一条)

 生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律の適用業種は同法第2条において「食品衛生法の規定により許可を受けて営む同法第五十一条に規定する営業のうち、飲食店営業、喫茶店営業、食肉販売業及び氷雪販売業」「理容業」「美容業」「興行場法に規定する興行場営業のうち映画、演劇又は演芸に係るもの」「旅館業法に規定する旅館業」「公衆浴場法に規定する浴場業」「クリーニング業法に規定するクリーニング業」と、今回の新型コロナウイルスの感染拡大が発生している場及び消費者が感染を警戒して売り上げが減少している業種と同じである。

 その法律の中で「営業者は、自主的に、衛生措置の基準を遵守し、及び衛生施設の改善向上を図るため、政令で定める業種ごとに、生活衛生同業組合を組織することができる。」(同法第三条)とされており、同業者が組合を設立して「自主的に、衛生措置の基準を遵守し、及び衛生施設の改善向上」することにより生き残りを図ってきたという歴史的経緯がある。その流れの中で、社交飲食業(居酒屋、カフェー、バー、キャバレー、スナックその他これに類する飲食業をいう。)の事業者が参加する社交飲食業生活衛生同業組合が結成され「衛生施設の改善向上、経営の健全化及び振興等を通じてその衛生水準の維持を図り、併せて利用者又は消費者の利益の擁護に資する」活動をしている。

 まさに、法律も、組合も、感染症拡大から国民と飲食店の業界を守るための知恵として先人たちが残して頂いたものだろう。

 現状では、京都産業大のケースで、居酒屋における懇親会にて、新型コロナウイルスのクラスター(感染者の集団)が発生した可能性が報じられている。京都市の担当者は日本経済新聞の取材に対して「飲食店での宴会は、自粛を呼びかけている『3密』の条件に重なる。人の移動が多い時期に集団感染が発生したのは残念だ」と話したと報じられている。また、キャバクラ店、ナイトクラブ等の社交飲食業における感染拡大は、複数報じられている。

 その結果として、安倍晋三総理は2020年4月11日、総理大臣官邸で第28回新型コロナウイルス感染症対策本部を開催し、緊急事態宣言を発出した7都府県以外の自治体でも、バー、ナイトクラブなど、繁華街の接客を伴う飲食店やカラオケ、ライブハウスに休業を要請するよう求めた。夜の繁華街においては、既に多くの感染が確認されており、密閉、密集、密接、3つの密がより濃厚な形で重なる、バー、ナイトクラブ、カラオケ、ライブハウスはもとより、繁華街の接客を伴う飲食店等については、緊急事態宣言が出ている地域か否かを問わず、全国全ての道府県において、その出入りを控えていただくよう、特措法第24条9項に基づいて、要請すべき旨を、基本的対処方針に新たに追加したのである。

 社交飲食業としては、客が減ることは、政府や自治体の外出自粛の要請がきっかけであると感じている所もあるが、実際には「感染拡大が現実に社交飲食店の店舗内にて発生している」という事実があり、その事が「マスコミで報道されて」また「政府・自治体がそその事実を踏まえて利用自粛」を訴えるに至ったという事実を忘れてはならない。すなわち、店舗内で感染拡大が広がる状況を解決できなければ、たとえ、政府が自粛を解除したとしても、顧客の新型コロナウイルスの感染への不安は払拭されず、来客は直ちには、すべては戻らないと予想される。事業主に対する営業自粛、顧客に対する来店自粛の要請を解除した後、感染が新たに発生した場合には、また、自粛ムードが発生してしまうことになる。抑制政策は、短期的かつ一時的には正しいものの中長期的に実施するとなると好ましくないのである。

 新型コロナウイルスが飲食店の店舗内で感染拡大することによる法的なペナルティーはないが、社会が感染症の拡大と医療崩壊を食い止めようと努力している中、飲食店で感染拡大を発生させることは「O157、ノロウイルス、寄生虫など」の感染拡大を発生さることと何ら変わるものではなく、店舗内で新型コロナウイルスの感染が広がることに関しては、飲食店の責任であると考える。

 

pdf 抑制から予防へ 2020年5月26日改正_Ver2 (1.61 MB)

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