呼吸器内科のお医者さんに聞いてみました「換気が悪いと何が起こる?飲食店での換気の重要性とは」

呼吸器内科のお医者さんに聞いてみました「換気が悪いと何が起こる?飲食店での換気の重要性とは」

2019年に最初の症例が発見されてから今もなお猛威を震い続けているCOVID-19。この感染症の流行により、飲食店での換気の良さはより重要になっています。しかし、COVID−19の脅威が去った後でも飲食店で換気を十分に行うことは重要です。

なぜなら換気が悪いことによる弊害はCOVID-19だけではないからです。

今回は換気が悪い飲食店で引き起こす弊害について解説し、それらの弊害を避けるためにはどのような方法があるのかについて見ていきます。

 そもそも換気とは

そもそも換気とは何を意味するのかについて初めにみていきましょう。換気とは部屋の中の空気と、外の空気を入れ換えることで、部屋の空気中にある汚染物資(「ガス」と「エアロゾル」)を、部屋の外に運び出し、部屋の中の汚染物質の濃度を薄めることです。「ガス」である汚染物質は換気でしか取り除けないのに対して、エアロゾルである汚染物質は空気清浄機等のフィルターでも取り除くことが可能です。

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換気が悪いことによる弊害1 感染症

換気が悪い店舗で起こることとしてまずは感染症の伝搬が挙げられます。

近年は新型コロナウイルス感染症COVID-19の出現で多くの人が認識しています。

そのため換気が明らかに悪い店舗は感染症を危惧して入店を避ける人も出ることが予想されます。そのため今後しばらくは換気に気を使うことは飲食店経営において必須となるでしょう。

またCOVID-19の脅威が去ったとしても他の感染症の対策としても換気は重要です。インフルエンザは季節ごとに流行しますので流行している時期には店舗の換気について気にする人も多くなります。また空気感染する感染症として結核や麻疹、水痘といった疾患があります。換気が悪いと感染者から発生したウイルスや菌を含むエアロゾルが空間に溜まりやすくなり、うつりやすくなります。また今後COVID−19のような新規の感染症が蔓延することがないとも言えません。そのような時に換気を充分に行える設備を持っていることは非常に重要であると言えるでしょう。

換気が悪いことによる弊害2 アレルゲン

飲食店の店舗を含めて建物にはアレルギーの原因になる物質であるアレルゲンが入り込むことがあります。

代表的なアレルゲンとして花粉(エアロゾル)があります。とくに多くの人が出入りする店舗であれば従業員やお客さんの衣服についた花粉が店舗の中に入り込みます。換気が悪いと花粉などのアレルゲンが店舗の中に持ち込まれ出ていかないのでアレルギー体質の人ではアレルギー症状が出現する可能性があります。

またエアコンや水回りでカビなどが発生することがあり、これが空気中に出てくることがあります。このカビ(エアロゾル)を吸い込むと肺にアレルギー症状を引き起こし、過敏性肺炎などの疾患にかかることがあります。

換気が悪いことによる弊害 タバコや調理で発生する煙

喫煙可能な席がある場合には換気設備を整えることは必須です。タバコの煙(エアロゾル)は吸っている人を中心として直径14mの円の範囲に届きます。(文献1)広さにして95畳に渡ります。そのため分煙にしたとしても換気が充分でなければ確実にタバコの煙は禁煙席に到達していると考える必要があります。飲食店であれば調理の際にでる煙(エアロゾル)なども店舗内に充満します。タバコはもちろん、調理などの際に出る煙なども空気中に高濃度で存在すると人体に対して有害になり得ます。また、これらの煙は目に見えるものであるため換気が不十分で充満していると、店舗の清潔感が損なわれます。匂いの強いものを扱う飲食店であれば匂いがこもってしまうことも客離れにつながってしまいます。また汚れとして壁や店舗内の備品に蓄積します。換気が悪い店舗は健康問題と、清潔性の問題を抱えることになってしまいます。

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換気が悪いことによる弊害 シックハウス症候群

シックハウス症候群は建物の建材から発生する化学物質(ガス)による室内空気汚染とそれによる健康被害を指します。症状としては目がチカチカする、鼻水、喉の痛み、吐き気、頭痛など様々です。(文献2)

シックハウス症候群の原因は近年の建築技術の向上にあります。昔の建物は気密性が低く、内外の空気の行き来があったのですが、建築技術の向上により隙間風などのない高気密な建物が建てられるようになってきました。これにより建材から出る有害物質(ホルムアルデヒド等)によりアレルギーを引き起こす様になるのです。

また気密性が高くなると湿度や温度が保たれやすく快適な環境が保ちやすくなる反面、細菌や、ダニ、カビなども繁殖しやすくなります。これらの物質も吸引することでアレルギーを引き起こしシックハウス症候群の原因になります。

家を建てるときに化学物質を出さないような建材を使用してもらうことも対策として大事ですが、すでに立っている建物の場合は換気を充分に行うことが最も有効な対策となります。

換気が悪いことによる弊害 二酸化炭素濃度があがる

二酸化炭素濃度の上昇も換気不足では問題になります。「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」という法律があり、この法律では二酸化炭素濃度の基準値は1000ppm以下と定められています。換気が不十分でこの濃度を上回ってしまうとシックビルディング症候群と呼ばれる疾患の出現率が高くなります。シックビルディング症候群は機密性の高い建物で新鮮な空気が建物に入ってこない状態で長い時間が経過することで起こります。頭痛や吐き気などの症状が出る場合があります。(文献3)。また二酸化炭素濃度の高い空間にいると血液中の二酸化炭素の濃度が上昇したり、心拍数の増加が見られることもあります。近年では1000ppm程度の二酸化炭素が存在することで労働生産性への影響があることが示唆されているのです。

他にも学校環境衛生基準では「換気」の基準で、CO2濃度. 1,500ppm以下とされていたり、労働安全衛生法の事務所衛生基準規則では、二酸化炭素濃度は5,000ppm以下と規定されています。

換気の指標「ガス」と「エアロゾル」

ここまで換気が不十分であることの弊害を見ていきました。飲食店での換気の重要性は、ますます増していきます。しかし、ただ闇雲に換気をしてしまうと、室内の温度や湿度を快適な状態にするのは難しくなります。冬は寒く夏は暑くなってしまいます。換気は必要充分に行うことが重要です。適切な換気ができているかどうかの指標である「ガス」と「エアロゾル」について見て見ましょう。

「ガス」は気体のことで、例えば二酸化炭素濃度の上昇などを検出するのに役に立ちます。

ショッピングモールなどの施設では二酸化炭素濃度を指標に換気を管理している場合があります。しかし、飲食店で二酸化炭素濃度を換気の指標にするといくつかの問題があります。まず飲食店はショッピングモールほど広くないところに多くのお客さんが入るため二酸化炭素濃度が上昇しやすい環境になっています。さらに火を使うため、調理などをしている時には空気中の二酸化炭素濃度が上昇しそれにより正確な換気の管理が難しくなります。

そのため二酸化炭素以外の指標が必要になります。

次に「エアロゾル」です。エアロゾルとは気体中に浮遊する微小な液体や固体の粒子と、周囲の気体の混合体のことを表します。エアロゾルの核となる粒子は分子レベルの極めて小さいものから花粉のようなある程度の大きさのあるものまで様々です。ここまで触れてきた有害な物質のほとんどはエアロゾルとして室内に存在しています。

そのため室内の空中に浮遊するエアロゾルを除去する能力を指標として換気の調整をすることが最も効果的です。

換気の確認に有効なエアロゾル除去性能測定器

空気中のエアロゾルを除去する能力がしっかりとあるかはエアロゾル除去性能測定器が有用です。

人工のエアロゾルを用いて換気や空気清浄機などの効果により空気中のエアロゾルを除去する能力を測定します。

煙など目に見えるものもありますがほとんどのエアロゾルは目に見えません。実際にエアロゾルを用いてそれがどのくらい除去されるのかについて測定をすることで換気ができているか、空気清浄機を使っているのであればフィルターの性能がエアロゾルの除去に十分かどうかを確認することができます。店内の環境を改善するための指標として大いに活躍します。

まとめ

今回は換気が不十分な飲食店で引き起こされる弊害について解説をしていきました。新型コロナウイルス感染症の影響で換気に対する意識が高まっていますが、換気が悪いことによるデメリットは感染症だけではありません。健康面の問題もありますし、店舗の清潔感も損なわれてしまいます。適切な換気を実施することによるメリットは非常に大きいのです。ただし闇雲に換気を行うと室内の快適性を損なう可能性があります。人に危害を与えるガスを除去するには換気が必要ですが、人に危害を与えるエアロゾルから身を守るためには、空気清浄機などによる相当換気を含めた換気を考えることが有効です。適切な換気を実現するためにエアロゾル除去性能測定器が有用です。快適な室内環境実現のためにぜひ導入をご検討ください。

参考サイトなど 

(文献1 https://www.med.or.jp/forest/kinen/loveforthesurroundings/

(文献2 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124201.html

(文献3 https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000771215.pdf


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